ゴルフスイングの基本を学んでいると、「フォワードプレス」という言葉を耳にすることがあります。これは、スイングを始める直前に体を少しだけ目標方向に動かす動作のこと。トッププロも取り入れているテクニックですが、初心者にとってはややイメージしづらいかもしれません。
この記事では、フォワードプレスの意味や種類、メリット・デメリット、クラブ別のコツまで丁寧に解説していきます。
フォワードプレスとは
ゴルフスイングを安定させるには、構えから振り始めるまでの始動がカギになります。アドレスの姿勢でじっと止まりすぎてしまうと、体が固まり、タイミングやリズムを崩しやすくなります。
そうしたミスを防ぎ、スムーズにスイングへ入るための準備動作として使われるのが「フォワードプレス」です。
ここでは、フォワードプレスの意味と主な動作の種類について解説します。
フォワードプレス=スイング始動で体をわずかに目標方向へ動かすこと
フォワードプレスとは、スイングを始める直前に、体の一部やクラブをわずかに目標方向へ動かす動作です。静止状態から一気にスイングへ入るのではなく、わずかな動きを加えることでリズムを生み出し、力みを減らします。
例えば、グリップを少し押し出したり、右膝を軽く踏み込んだりといったシンプルな動きでも問題ありません。どれも大きな動作ではなく、「動いたかどうか分かる程度のわずかな変化」が基本です。
プロの多くが取り入れていることからもわかるように、スイング全体の流れを整えるうえで実用性のあるテクニックといえます。
ゴルフのフォワードプレスの種類
フォワードプレスにはさまざまなバリエーションがあります。動かす部位によって分類すると、主に次のようなパターンが見られます。
| 動作の種類 | 動かす部位 | 動きの内容 |
|---|---|---|
| グリップ前方移動 | 両手・グリップ | 手元をほんの少し目標方向へ押し出す |
| 右膝の踏み込み | 右膝 | 右膝を前方に出して、下半身から始動を促す |
| フェースの開閉 | 手首 | フェースを軽く開く、または閉じて始動のリズムを作る |
| 上体のシフト | 胸・肩 | 上半身を目標方向にわずかに移動させる |
| 下半身のシフト | 骨盤・腰 | 腰を少し押し出して、全身の動きを引き出す |
どの方法が正解というわけではなく、自分のスイングの感覚やテンポに合った動きを見つけることがポイントです。クラブの種類やショットの目的によって使い分けるケースも多く、プレースタイルに応じて工夫しやすい要素のひとつといえるでしょう。
フォワードプレスの効果・メリット
スイングの始動を滑らかにするために効果的な予備動作がフォワードプレスです。見た目は小さな動きですが、取り入れることで得られるメリットは意外に多くあります。
ここでは、フォワードプレスがもたらす主な効果を3つの観点から解説します。
スイングのリズムが整いやすくなる
フォワードプレスは、スイング全体のテンポを安定させる役割を果たします。特に初心者の場合、アドレスで長く止まりすぎると体が固まり、スイングの始動がスムーズでない方も多いでしょう。
しかし、フォワードプレスで一度軽く動きを加えれば、体が自然に連動しやすくなり、スムーズな始動へとつながります。結果として、振り遅れや手打ちなどのミスも減り、再現性の高いスイングがしやすくなるでしょう。
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力みや緊張を軽減できる
構えた状態でじっとしていると、肩や腕に余計な力が入りがちです。こうした緊張はスイングに悪影響を及ぼしやすく、トップやダフリなどの原因になります。
一方、フォワードプレスを行うと、体が自然と動き出す状態に切り替わるため、静止時の力みをうまく逃がせます。特にショットの場面で緊張しやすい人にとっては、リラックスするきっかけにもなるでしょう。
スイングの始動に「きっかけ」ができる
ゴルフスイングでは、構えから振り始める「初動」が最も難しいと感じる人も少なくありません。特に初心者は、いつクラブを引き始めればよいか分からず、始動がぎこちない方も多いでしょう。
フォワードプレスは、その「きっかけ」を自分で作るための手段になります。
ルーティンの一部として取り入れることで、毎回同じリズム・タイミングでスイングを開始でき、ショット前の不安も軽減されます。
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フォワードプレスのデメリット
フォワードプレスはスイングを安定させる効果がありますが、使い方を誤るとかえってミスを招く場合もあります。
代表的なのが「動かしすぎ」による軌道のズレです。グリップを前に押し出しすぎたり、膝の動きが大きくなったりすると、スイングの構造自体が崩れてしまいます。また、始動のタイミングが毎回バラついてしまうと、スイングリズムも不安定になります。
あくまでわずかな動きが基本であり、自然な流れの中で取り入れることが前提です。意識しすぎることで逆にぎこちなくなるケースもあるため、自分のスイングに合う形で無理なく取り入れましょう。
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フォワードプレスのやり方
フォワードプレスは難しい動作ではありませんが、正しい手順で取り入れることで効果を最大限に引き出せます。
ここでは、実際のやり方を3つのステップに分けて紹介します。
1）アドレスで構えを安定させる
まずは通常通り、肩幅に足を開いてアドレスを取ります。重心は両足の内側に均等にかけ、上半身の力を抜いて自然な姿勢を意識しましょう。クラブのフェースが目標に正しく向いているかを確認し、必要があれば軽く調整します。
このとき、構えたまま動かずに静止していると体が固まりやすくなるため、呼吸を整えてリラックスした状態を保つことがポイントです。
2）わずかに目標方向へ動かす
アドレスが整ったら、手元・膝・肩など体の一部を目標方向にわずかに動かします。両手をほんの少し前に押し出す、右膝を軽く出す、肩を少し回すといった動きが代表的です。
重要なのは、動きの幅を極力小さく抑えること。大きく動かしてしまうとスイング軌道がズレたり、タイミングが合わなくなったりするため、あくまで「動いたかどうか分かる程度」を意識しましょう。
3）そのまま自然にスイングを始動する
フォワードプレスの動きが終わったら、流れを切らずにそのままスイングへ移ります。一度止まってしまうと意味がないため、「プレス → 始動」が自然につながるように体に覚えさせるのがコツです。
慣れるまではぎこちなく感じることもありますが、反復することで徐々に自分のリズムがつかめてきます。鏡や動画で確認しながら練習するのも効果的です。
【クラブ別】フォワードプレスのコツ
フォワードプレスはすべてのクラブで応用できますが、クラブごとに求められるショットの精度や弾道が異なるため、取り入れ方にも違いがあります。
ここでは、パター・ドライバー・アイアンの3種類に分けて、それぞれのクラブに合ったフォワードプレスのコツを紹介します。
パター
パッティングでは繊細なタッチと距離感が求められるため、大きな動きは禁物です。パターでのフォワードプレスは、手元や肩などをほんの少しだけ前に出す程度にとどめましょう。
このとき、フェースの向きが変わらないように注意が必要です。グリップだけを押し出すイメージで行うことで、インパクト時に自然なハンドファーストの形が作りやすくなり、順回転のかかった安定した転がりにつながります。
ドライバー
ドライバーは飛距離を重視するクラブであり、勢いのある始動とタイミングの一致が重要です。ここでは、右膝を少し前に出す、あるいは腰を軽く押し出すような下半身主導のフォワードプレスが効果的です。
これにより、体全体を使ったダイナミックなスイングへ入りやすくなります。上体や手元の動きに頼りすぎるとスイングの再現性が下がるため、重心移動を意識した土台からの始動を心がけましょう。
アイアン
アイアンでは、正確なミートと適切な打ち出し角の両立が求められます。フォワードプレスとしては、グリップをやや前方に押し出す動きが一般的です。グリップを軽く押し出すと、インパクトで自然にハンドファーストの形を作りやすくなります。
ただし、押し出しすぎるとフェースが開いたり、ダウンブローが強くなりすぎたりする恐れがあるため、動きはあくまで控えめに。アドレス時のバランスを崩さない範囲で取り入れてみましょう。
プロゴルファーのフォワードプレス
プロの中には、フォワードプレスを“静 → 動”のスイッチとして取り入れている選手が少なくありません。それぞれのスイングスタイルに合わせた使い方に注目すると、自分なりの応用ヒントを得やすくなります。
ここでは、プロゴルファー3名のフォワードプレスの特徴を見ていきます。
ローリー・マキロイ
マキロイのスイングを見ると、左膝を伸ばすような小さな動きをフォワードプレスとして使っているケースがあります。左膝を少し伸ばす動きにより、骨盤が目標方向と反対に動き、体の捻転差を作ってからスイングを始動できる点がポイントです。
また、彼は構えた後アドレスの静止時間を短くし、動き出しを早めることでリズムを維持する傾向もあります。
このように、彼のフォワードプレスは「ほんのわずかな膝の動き＋速やかな始動」で、フェースの開閉を抑えつつ安定したスイングへつなげています。
タイガー・ウッズ
ウッズは昔から、パッティングやショットで手元をわずかに前に動かすフォワードプレスを活用してきたとされています。
ストローク前、クラブを振り始める直前に手元を軽く押し出し、静から動の移行を滑らかにするのが彼の特徴です。特にプレッシャーのかかる場面では、この小さな動きがスイングの再現性を高めていました。
ダスティン・ジョンソン
DJ（ダスティン・ジョンソン）は、フォワードプレスをテークバック開始前の予備動作として明確に使っています。
彼はアドレスでクラブと左腕が一直線になる構えから、まず手元をターゲット方向に押し込むような動きを入れてからテークバックに入ります。インパクト時に、フォワードプレス時のハンドファーストの形を再現しやすくなる点がポイントです。
また、手や腕の余計なローリング動作を抑え、体の回転主体でクラブを運ぶスイングスタイルとの相性もよいのでしょう。
ゴルフ初心者におすすめのフォワードプレスは？
初心者にとって取り入れやすいのは、グリップをわずかに目標方向へ押し出すシンプルなフォワードプレスです。手元を軽く動かすだけなので構えが崩れにくく、スイングのきっかけをつかみやすくなります。
動作は大げさにせず、「気持ち動かす」程度で十分です。無理なく毎回のルーティンに組み込めるため、ショット前の緊張をほぐす効果も期待できます。
まずはこの方法から試し、自分に合った形を少しずつ見つけていきましょう。
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フォワードプレスは、ほんの小さな動きがスイング全体に影響する繊細なテクニックです。自己流で取り入れるのも良いですが、やはり効果的な使い方を身につけるには、プロの目線でのアドバイスがあると安心です。
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