初めてラウンドに出る際、「プレーが遅くて迷惑をかけないだろうか」と不安を抱く初心者は少なくありません。
ゴルフは、進行のスムーズさが求められるスポーツであり、周囲へ配慮しながら楽しむ必要があります。中でもスロープレーはゴルフ場で最も多いマナー違反の1つであり、ほかのプレーヤーとのトラブルにも発展しかねません。
そこで今回は、スロープレーとは何か、その背景にある考え方を解説し、初心者でもすぐに実践できる対策を紹介します。安心してプレーを楽しむために、基本的なマナーを身につけておきましょう。

初心者に多いゴルフのスロープレーとは
ゴルフにおける「スロープレー」とは、プレーの進行が遅れることにより、後続の組や周囲のプレーヤーに迷惑をかけてしまう行動のことです。とくに初心者の場合、ルールや流れに不慣れなことから、気づかないうちにスロープレーにつながることがあります。
例えば、クラブを選ぶのに時間がかかったり、次の動作に移るまでに戸惑ったりすることがその一因です。「前の組が遅い」と感じることがありますが、これは、スロープレーが原因で全体の流れが滞っている状態といえます。
初心者にとって、周囲のペースを意識することは大切なマナーの1つです。プレーの遅れがほかのプレーヤーに与える影響を考え、自身の行動を見直しながらラウンドに臨む姿勢が求められます。
スロープレーに関するルール・マナー
ゴルフでは、プレーの進行をスムーズに保つために、いくつかのルールやマナーが定められています。
スロープレーに対しても明確な基準が設けられており、その中でもとくに重要とされるのが「40秒ルール」です。これは、自分の番が来てからショットを打つまでの時間を40秒以内に収めることを推奨するもので、大幅に超過した場合にはペナルティの対象になることもあります。
また、打つ位置が明確になった時点ですぐに準備に取りかかることも大切です。こういったルールは、プレーヤー同士の配慮や、ゴルフ本来のリズムを保つために設けられています。
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スロープレーになる主な原因
ゴルフでスロープレーが発生する背景には、主に以下のような原因があります。
- ショットするまでの時間が長い
- クラブ選択やライン読みに時間がかかる
- 次のショット地点やカートまでの移動が遅い
- 打順が回ってきてから準備を始める
スロープレーになる要因として、「うまく打ちたい」という気持ちからアドレス時にあれこれと考え、ショットするまでに時間がかかることが挙げられます。また、クラブの選択に時間がかかることや、打つ前にグリーンのラインを慎重に読みすぎることもペースが遅れる原因です。
さらに、打ったあとにすぐ移動しない、同伴者のプレーを見ていない、順番が来てから準備を始めるといった行為も、全体のテンポを乱す要因になりえるでしょう。
これらのことから、ショットの技術やスコアよりも、周りへの配慮不足や次のショットへの準備不足がスロープレーを助長させているといえます。
とくに初心者は、焦りや緊張によって動作が過剰に慎重になる傾向があります。その結果、無意識のうちにプレーの流れを遅らせてしまうことがあるのです。
周囲のリズムを意識せずに自分のペースで行動すると、スロープレーに気づかないまま進行してしまう可能性があります。
スロープレーによって起こりえる問題
スロープレーは、単に進行が遅れるだけでなくプレーヤー同士のトラブルや精神的な負担、安全面のリスクなど、さまざまな問題の引き金になりえます。
ここでは具体的な事例を紹介します。
喧嘩などの揉め事
スロープレーが原因で発生するトラブルの中でも、喧嘩のような揉め事はとくに避けたいものです。
後ろの組から「遅い!」と怒鳴られたり、あからさまに打ち込まれたりすると、ラウンド全体の雰囲気が一気に険悪になります。とくに初心者は、自覚がないまま進行を遅らせてしまうことが多く、トラブルに発展しやすい傾向です。
実際に、マナーに厳しいゴルファーが多いゴルフ場では、前の組と後ろの組が口論になる例もあります。こうした揉め事は、周囲に不快な空気をもたらすだけでなく、当事者自身も萎縮し、プレーに集中できなくなることも少なくありません。
プレー全体の進行遅延によるストレス
スロープレーは、その場にいる全員のリズムを乱し、徐々にストレスを蓄積させる要因となります。
とくに後続の組は前の組のプレースタイルを目の当たりにしているため、プレーの進行状況によっては苛立ちを覚えるかもしれません。一方、前の組でも「自分たちが後ろを待たせているかも」と感じ始めると、焦りが生じ、プレーに支障をきたすおそれがあります。
こうした悪循環が続くと、ラウンド全体の雰囲気が重くなり、ゴルフ本来の楽しさも損なわれてしまいます。
後続組からの打ち込みなど安全面のリスク
スロープレーは、ラウンド全体の進行を遅らせるだけでなく、安全面でも大きなリスクを伴います。
とくに注意したいのが、後続からの「打ち込み」。度重なる待ち時間に業を煮やし、まだ前の組が打ち終えていないにもかかわらずショットしてくることがあります。
打ち込みは非常に危険であり、最悪の場合はプレーヤーにボールが当たり、けがにつながるおそれも……。打ち込みは絶対してはいけないマナー違反ですが、打ち込まれないように前の組がプレーファーストを意識することも大切です。
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スロープレーの対策3選
スロープレーを防ぐには、日頃の心がけとちょっとした工夫が効果を発揮します。とくに初心者でもすぐに実践できる内容を意識すれば、ラウンド全体の流れが整い、周囲への配慮にもつながるでしょう。
ここでは、プレー中に取り入れやすい3つの工夫を紹介します。
事前にクラブ選択や打つ順番を意識しておく
スムーズなプレーを意識するには、打つ前の段階で「どのクラブを使うか」「誰が次に打つのか」などを決めておくことが重要です。
グリーンまでの距離や風の強さを確認しながら、移動時に複数のクラブを持っていくとカートまでの往復する時間を減らせます。打順についても、自分の番を把握していれば、いざ順番が来たときに慌てずに行動できるでしょう。
とくに初心者は、各プレーで立ち止まりがちです。しかし、こうした小さな準備を積み重ねることで、スロープレーの防止につながります。時間の使い方を意識し、周囲とのテンポを合わせる力を身につけましょう。
同伴者のプレー中に準備を進める
ラウンド中は、自分の番を待っている時間を有効活用することが大切です。
例えば、同伴者がショットの準備をしているあいだに、次のショットに備えてクラブを選んだり、残りの距離や風向きを確認したりしておくと、プレーの流れがスムーズになります。
打順が回ってから慌てて準備を始めると、時間を浪費し、スロープレーの原因にもなりかねません。
初心者の場合は、予備のボールを常に持ち歩くこともおすすめです。ミスショットにより打球が池やOBゾーンへ入った際に、ボールを取りに戻る時間を短縮できます。
スコア記入は次のホールで行う
ホールを終えた直後にスコアを記入したくなることもありますが、その場で立ち止まる行為はスロープレーの一因となるため注意が必要です。とくにグリーン周辺では、後続の組が待機している場合も多く、進行の妨げとなってしまいます。
スコアの記入は、次のホールのティーイングエリアなど、安全で迷惑にならない場所で行うのが基本です。
初心者のうちは「忘れないうちに書きたい」と感じやすいかもしれませんが、まずは速やかに移動し、落ち着いてから記入する習慣を身につけましょう。
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スロープレーについて同伴者に注意する場合のポイント
同伴者のスロープレーに気づいたとき、どのように伝えるべきか迷う方は多いのではないでしょうか。
せっかくのラウンドを気まずくせず、快適に進行させるには、伝え方にひと工夫が必要です。相手の気分を損ねず、雰囲気を壊さないような注意の仕方を知っておきましょう。
ここでは、注意する際に意識したいポイントを3つに分けて紹介します。
プライドを傷つけないように言葉選びと伝え方に配慮する
ゴルフは「紳士のスポーツ」とも呼ばれるほど、マナーや気配りが重んじられます。そのため、同伴者にスロープレーをやんわりと伝える場面では、言葉選びや伝え方に細やかな配慮が求められます。
具体的には、「ちょっと急ごうか?」「次の組が近づいてきたね」といった軽い声かけがよいでしょう。
相手を責めるような口調や否定的な言い回しは避け、あくまでラウンド全体をスムーズに進行させるための一言として伝えることが大切です。とくに初心者は、自身の遅れに気づいていないこともあるため、優しくフォローしながら促す姿勢が、トラブルの回避にもつながります。
自分の行動を例にして伝える
スロープレーを指摘するときは、相手の行動を直接指摘するのではなく、自分の経験を例に挙げて伝えると、相手も受け入れやすくなります。
例えば、「前にクラブ選びで迷って時間がかかってしまって、後ろの組に追いつかれたことがあったんだ。それ以来、2本持って歩くようにしてるよ。」といった声かけが効果的です。
このように伝えることで、相手も自然と「自分も見直そう」と感じやすくなります。
初心者はペースの遅れに気づいていないこともあるため、仲間としての共感を込めた伝え方が効果的です。自分も同じような経験をしていると示しながら助言することで、場の雰囲気を和らげながらスムーズな進行を促すことができるでしょう。
注意するタイミングと状況を見極める
スロープレーを指摘する際は、伝えるタイミングと場面をよく見極めましょう。
ラウンド中に相手がミスをした直後や、緊張している様子がみられるときに声をかけると、かえって気まずい空気を生むおそれがあります。そのため、少し落ち着いた移動中や休憩のタイミングを選び、やわらかく伝えるのが効果的です。
例えば、「今のホール、ちょっと後ろ詰まってたかもね」といった軽い一言でも、相手に状況を振り返るきっかけを与えられます。また、グループ全体の雰囲気が穏やかなときに伝えれば、深刻な印象を与えず、前向きな改善につなげやすくなるはずです。
プロゴルファーでもスロープレーが話題になることがある?
プロゴルファーであっても、プレー速度について取り上げられることがあります。
とくに大きな大会ではプレー時間が厳しく管理されており、進行が遅い選手は観客やメディアから批判を受けることも。実際、海外ツアーではスロープレーによって警告やペナルティを受けた例も少なくありません。
プロの世界でも問題となることを踏まえると、ゴルフではテンポのよい進行がいかに重視されているかがわかります。
【事例】スロープレーによるトラブル
ここでは、スロープレーが原因となって発生した具体的なトラブル事例を取り上げます。
プロゴルフの大会での事例
2013年の全英オープンでは、日本の松山英樹選手がスロープレーによって1打罰を受け、大きな話題となりました。17番ホールでのショットに2分以上を要し、規定時間を超過したことが理由です。
この出来事は、同組の選手からも批判の声が上がるほど波紋を広げました。
PGAツアーでの事例
2025年のヒューストン・オープンでは、PGAツアーの最終組におけるスロープレーが大きな波紋を呼びました。
アレハンドロ・トスティ選手が意図的にプレーのペースを遅らせたとされ、同組のミン・ウー・リー選手に精神的な圧力を与えたのではないかと報じられたのです。
この行為はテレビ中継でも取り上げられ、ゴルフ界全体にスロープレーの深刻さを再認識させる出来事となりました。
アマチュアゴルフでの事例
アマチュアゴルフの現場でも、スロープレーが深刻なトラブルを引き起こすことがあります。
あるゴルフ場では、前の組の進行が極端に遅れたことで、後続組が長時間待たされ、ついには前の組へ打ち込むという危険な行為が発生しました。
このような状況はゴルフ場へのクレームにつながり、プレーヤー同士の口論に発展することもあります。
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スムーズな進行は、ゴルフにおける基本的なマナーの1つです。スロープレーは、トラブルやストレスだけでなく、安全面でのリスクを招く原因にもなるため、ゴルファー全員が意識して取り組む必要があります。
中でも重要なのは、「周囲に配慮しながらプレーする姿勢」を意識することです。
こうしたマナーを自然に身につけるには、実際のコースでラウンドをしながら実践的に学べる「コースレッスン」がおすすめです。
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